内部は、耳鳴りがするほど静かで、自分の服が擦れる音までも反響した。
廊下の端から反対側の端を見てみるが、そこがどうなっているのかが確認できない位遠い。
各部屋は全く同じ造りになっていて、変化が少ない。
大きな窓が室内を照らし、コンクリートの寒々しいイメージを緩和させていた。
部屋はチラ見程度にして先へ進むと、廊下の突き当たりに辿り着いた。
しかし、驚いた事にこの突き当たりは、建物の中間地点で、壁を挟み、更に同じ長さの廊下が先に続いている。
建物の真ん中にある部屋は、各部屋の5倍位の広さで、プールが2つ存在した。
プールの深さは約1.2メートル程で、長さは20メートル弱。
この大きさのプールが入ってしまうほどの空間で、その広さに驚いた。
更に長い廊下を進んでいく。
先ほど歩いてきた廊下に比べると、やや暗くなっているが、
窓から差す光が自然の照明になっており足元を照らしていた。
各部屋は相変わらず同じパターンの繰り返しだ。
2階に上がってみてもそれは変わらず、足音だけがマンション内に響き渡っていた。
プールの真上の場所に辿りついた。
そこはエントランスになっていて、大階段が階上に向けて伸びていた。
斜面に建つこのマンションは、屋上廊下側から入るタイプで、
部屋側の景色は、自然だけが見える構造に設計された様だ。
お世辞にも景色が良いとも言えず、樹しか見えない。このリゾートマンションが完成してたら一体どんな人達が買っていたのだろう?別荘には使えるが交通の便は悪く、冬には雪も多い。急な山坂道を登らないと辿りつけないこのマンションは、日常生活をするにはかなり不便である。自然を甘く見ている「自然はいいよね」と言っている都会人には、気紛れでこの様な場所に建つマンションを買うのがちょうどいいのかもしれない。今まで見てきた建築途中系廃墟の中で、横方面の大きさは間違いなく最大だろう。
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