OT邸
川の近く、砂利道を数分歩くと草に覆われた階段の向こうに一件の家がある。
その家を囲う木々にはセミが激しく泣き、足元の雑草の合間には夏特有の虫が這う。
一歩足を踏み入れると、アイツらが待っていた。
「またコイツらか……」
耳元でその不快な音をさせる。
辺りが静かだけに、その羽音はより近くに感じる。
「蚊」
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